さむら

ふらりと歩いた印象だけれど、銀座には画廊が多い。ような気がした。裏通り。松坂屋裏の小さなビルの四階。三人も乗ればもう隣にいる誰かと触れ合ってしまうエレベーター。画廊のドア。ちょっと既視感。何だろうと考えて、あとで気づいたことだけれど、何かの映画で見た刑務所の面会室。中は薄暗かった。少しだけの灯り。がらんとした部屋。ドア横に棚。部屋の壁にただ絵が貼ってある。一枚ずつ見てく。女性。肌。縄と鎖。ほとんどが繋がれていた。傷。痣。針。釘。突き刺すもの。苦痛と不安。腕と足。娘達が、この場所に繋がれていて、ただそれを見てく。印象。客は僕も入れて四人。たまたまなのかもしれないけれど、そのときはそれぞれが一人で、何も話さず。ジジジというライトの音、足音、出入りするときのドアの音、本を捲る音。ドア横以外にも棚があって、中央よりもやや壁よりに二つ、『人でなしの恋』が置いてある棚と、原画のファイルが置いてある棚。一人、大学生のような印象、女性の客がいて、その人がもっとも熱を持って見ていた。気がする。
見入った。「怖い」に近いのだけれど、上手く説明できない感じで。でも、見入った。ファイルを捲る指が少し震えた。こういうふうに言っていいのかわからないけれど、見れてよかった。