吐き出してしまわないように彼女は両手で口を押さえた。泡立ったそれが口の端からこぼれ、顎の先まで伝う。眉をひそめ、次第に目が潤んでくる。「ほら、飲めないんだったら出しちゃっていいから」という彼の声にも、彼女は首を振った。「飲みたい」とも「飲める」とも言ったのは彼女自身だ。けれど、とてもにがい。ビデオとか漫画とかではみんな「美味しい」って言ってたのに。全然美味しくなんかない。変な味。少量の、けれど彼女にとっては眩暈を起こしそうな量の口内の液体。彼の心配そうな顔に意を決して、ゆっくりと喉を鳴らした。
「ん……、んく……、んっ……」
 彼女は彼の顔を真っ直ぐに見て、ニッと、少し照れくさそうに笑った。
「飲んだよ。ほら、残ってないでしょ?」
 何故か自慢げに、褒めて欲しそうに口を開ける。
「そうだな、偉い偉い」
「えへへ」
 頭を撫でてくる彼の手に、彼女は幸せそうな顔をした。

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僕にとってはこういうのが一番むずいですね。ではまた。