恩田陸推薦、ということなので買ったわけですが。
面白かった。SFというか怪獣映画の亜種というか。ウルトラマンの出てこないウルトラマン。悪意のない怪獣。そこから発生する人間ドラマ。以下、ネタバレしそうなので気をつけてください。手探りで解決策を探す人達。政治的な理由で先走る政府。起こってしまった最悪の結果。間違えてしまった少年。SFでもちろんライトノベルなんだけど、なんだろう、カタルシス的な解決をしなかったのがすごいと思った。起こってしまったことに、どうにか対処しようとする意志を書いている。
キャラクターが良い。春名高巳の飄々とした態度には憧れる。宮じいはやばいくらいにかっこいい。武田光稀のかわいさは反則。瞬と佳江にじりじりする。フェイクの意志が切ない。ラスト近くの、宮じいと真帆の対話の中にある生身が芯にくる。

あたしはそんなに上等じゃない―――誰かの目印になれるほどきれいじゃない。

恩田陸が推薦するものは大概、「気持ちの揺れ」をちゃんと書こうとしているのが見て取れて安心する。
「かわいすぎだろおまえら」というところもあるんだけど、それもまあ良しで。