ファミ通文庫田口仙年堂の新シリーズ。
悪の組織「ブラック・ブリッツ団」に紛れ込んだいるはずのない少女。推定五歳。大きな目と乏しい表情。組織の生活課課長であるQ三郎――口は悪いが気は優しい――はその少女の前で困惑する。少女は言う。「アイス、たべたい――」と。
前半ところどころ味薄いかなと思ったけれど、後半はもうたまらない。絶妙。
巨漢で素朴な構成員とか、柔和な顔した訛りの入った言葉遣いをする構成員とか、その日常とか。何だかもう、すごいツボにくる。ヒーロー物で、そのヒーローより悪の組織に心引かれたやつってけっこういると思う。僕とか。ティム・バートンが好きなやつとか。
で、ここにその「愛すべき悪の組織」がある。「愛すべき悪の組織の構成員」がいる。はまる。

 罪のない人を傷つけるのは、クモ怪人もいやだった。できるならば、誰にも傷つけずに目標のみに集中したい。そのために誰かを脅すならば、喜んで異形の姿になる。気の弱いクモ怪人にとって、この姿はなによりの力だった。

とか、もう惚れる。他にも引用したいフレーズがごろごろあるんだけど、ネタバレになるのでね。あー。
表情の乏しい少女が笑顔を取り戻すまでの話。田口仙年堂はずっと変わらずそういう話を書いてるよなぁ。すげえ好きだ。愛すべきロリコン
あと、ぶっちゃけコッペが可愛すぎる。