はじめて入った漫画喫茶。どこか昭和の香りがするセピア色が似合いそうな店内。レジにいる店員(女性)の声は細く、聞き取りにくい。おそらく三十過ぎ。何故かうつむき加減で、気だるい雰囲気を漂わせている。髪を無造作に縛っていて、ここで働いているのは漫画好きが高じたからではないかと無粋な想像をしてしまう。もう一人の店員(男性)はオールバックで、山岡士郎を思わせる。彼からも充分に昭和の香りが感じ取れた。
最近の漫画喫茶は出版社別、作者別等に棚分けされているけれど、この店ではあまりきっちりとはされていない。「空手バカ一代」「デビルマン「キャプテン」あしたのジョー」などが一番目立つ棚においてある。それらの本は大概黄色く焼けている。
とりあえず僕は森永あい松本次郎というどこか間違えたチョイスをしつつ適当な席に着いた。しばらく読んでいると、女性店員のほうが休憩に入ったのか、席に着いてパンなど食べだす。彼女が座ったのは、ほぼ中央の席だった。おそらく、食事はいつもその席でとっているのだろう。そう思わせるほど堂々とした食べっぷりだった。デザートなんかも用意していた。常連らしき客と雑談なんかもする。
ある意味完璧でした。ぶっちゃけその店員の動向が、一挙手一投足が、気になって気になって漫画なんて読めなかったです。変に感動してました。これ、分かち合える感覚なのかがかなり微妙な気がしてきましたが。「店」としてはどうなんだろうとは思うけれど、そのうちまた行ってみたいと思ったわけです。