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- 『1985年の奇跡』(五十嵐貴久)
- 作者: 五十嵐貴久
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 文庫
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感想書いたけど、これ正直以下の文を読む前に買いに行ったほうがいいと思う。
1985年の小金井公園高校野球部。進学校で、何か問題があればすぐに廃部にされそうな部。野球は好きだがやる気なく、それよりも夕にゃんのほうが大切な野球部員。甲子園とか目指しやしねえ。そこに沢渡という天才投手が転校してきて……。というのが大まかな流れ。
何が良いのかというと全部が良いんだけど、とりあえず触れるべきは語り口かなと。異様なほど軽快。読んででずっとニヤニヤし通しでした。僕は一つの文章、フレーズだとかに惹かれる傾向があると思うのだけれど、一つどころじゃねえよ。こんなにバシバシきたのは田口仙年堂以来。
キャラクターもいい。部員は基本やる気がないんだけど、そのやる気のなさを物凄く活き活きと描いている。で、やる気を出す理由、切っ掛けも思わず「そう!」と膝を叩かんばかりのとこで。
最初、沢渡は「天才投手」という記号なんだけど、途中で「うわ、そうくるか」と。その見せ方というか、ばらし方というか。そういう構成もうまい。
解説にもあったけれど、クライマックスで、まさかあんなシーンで泣かされるとは思ってもみなかった。
テンション上がる小説。王道で同時に異端。素晴らしい。
以下、ネタバレっつうか読んでないと何のことだかなんですが、
金沢真美の上目使いの視線から送られる懇願光線を跳ね返せる生物は、少なくとも銀河系には存在しない。
これほどまでに説得力のある理由はないだろう。こういうところがほんとすごいと思った。
衝動的に『2005年のロケットボーイズ』を買った。まだ途中だけどいいよ。これもいい。しばらく五十嵐貴久の作品を追うかな。