• 『百目の騎士』壱(原作/小池倫太郎、作画/村崎久都)

メディアワークス
過去に何度か取り上げていた「ふらせら」の原作者の作品。というのを前にnarusawaさんに教えてもらいました。ども。
SF。軍隊の、はみ出し者の話。小池氏はそういうのが好きなんだろう。僕も好きです。
幼い頃から騎士に憧れていたクルハ・チヅルは、王の親衛隊に志願し、しかし実際の騎士に失望して、昇格すらしようとしない。あるときチヅルは、乱暴者で手に負えない十五歳の新米騎士のエイクス・ロッカの教導役を押し付けられる。ロッカはことあるごとに軍規や軍隊特有の礼節に引っ掛かり、それにチヅルも巻き込まれていく。というのが一巻の大まかな流れかな。
「ふらせら」は基本一話完結のものだったけれど、こっちは「連載」。絵の質もあってか、コメディ色は押さえ目。
面白かった。あとがきにもあったんですが、一巻はまだ序盤。ちゃんと終わらせるまでは続いてほしい。キャラがいい。チヅルがいい。はみ出すロッカを「立場上」言い含めることになるのだが、そのときの、おそらくロッカだけに通じる、有効な、その瞬間の本音のような言葉がいい。
以下、セリフを引用。ネタバレにもなるかも。

さっきお前は「敬うフリをするのはシラジラしい」と言ったな?
実は私もそう思っている
嫌いな人間には敬礼しなくてもいい
その代わりにそいつの官位に敬礼しろ 官位は権力だ そいつの人格とは関係ない
私のことも敬わなくて構わない
だが コンビの教導役という立場には気を遣え

こう言って置きながらもチヅルはロッカを庇い、ロッカもチヅルにだけは従う。


ここに描かれている、チヅルも、ロッカも、軍規も、正しくはない(正義ではないと言う意味)。けれども、そんな中でどうにかしていく。どうにかしようとしていく。それは、『ふらせら』のときと同じ質感だと思った。この人の色なのだろうなと。気に入っている部分でもある。
あと、作画の村崎久都氏は、ずっと前に触れた(http://d.hatena.ne.jp/nisinao/20060720/p1)『アルテミス・スコードロン』(扇智史)のイラストを担当しているみたいです。『アルテミス〜』も「軍隊」で似たような感じなので、好きな人は是非。