横須賀に巨大甲殻類来襲。
食われる市民を救助するため機動隊が横須賀を駆ける。
孤立した潜水艦『きりしお』に逃げ込んだ少年少女の運命は!?

横須賀に巨大エビが上陸し、人を襲う。それだけ聞くとキワモノのようだけど、書いてあるのは『空の中』と同じく真っ向からの人間ドラマ。
先に難癖をつけると、あまり助走せずのいきなり全力疾走なので読み始めはどうしても気持ちが遅れてがちになってしまったり、主要人物以外のキャラクターがややぼやけてしまっているような気もする。のだけれど、助走部分を書いたりキャラを掘り下げたりするとこれ以上のページ数がかかるだろうから、そこら辺は目を瞑るべきかなと(そういうのをクリアすると逆に臨場感が損なわれることもあると思うし)。
一気に読みたいタイプとじっくり読みたいタイプの小説があって、これは一気に読みたいタイプで、実際に一気に読めたことが、なんというか、嬉しい。そうできる内容や文章だったと思う。面白かった。
キャラクターがいい。かっこいい。そのかっこよさは「ヒーローのかっこよさ」ではなく、「ヒーローであろうとする人間のかっこよさ」だったり、「ヒーローをサポートする人間のかっこよさ」だったり。

 滝野はむしろ自分に言い聞かせるように言った。
「俺たちはそういう国の役人だ」
 陸自の施設隊にも言ったことをもう一度口にする。
「次に同じようなことあったら今より巧くやれるようになる、そのために最初に蹴つまずくのが俺たちの仕事なんだ」

「ヒーローじゃないけどやけにかっこいいおっさんら」がいる。
実際、ここまでかっこいい人らばかりかどうかと考えると、やや疑問に思ったりもするけれど。甘いことを言うと、そうであってほしいと思う(たぶん作者もそうであってほしいという形で書いたんじゃないかなぁと勝手な推測をする)。
軍事的なことがどこまでリアルに書けているかどうかはマニアじゃないからわからないのだけれど、米軍、政府、マスコミの対応なんかはやけにリアルに感じた。憤る。
あと、この人は、圭介を書きたかったのだろうなと思った。裏の主役。
とにかく満足した。上質のエンターテイメント。